治療していないむし歯や歯周病は口臭の原因になる?
2023/00/00
むし歯の影響は薄いですが、歯周病は口臭の原因になります。
私たちのからだは日々、新陳代謝を繰り返しています。皮膚があかとなってはがれ落ちるように、口の中のでも粘膜のもっとも外側にある上皮細胞がはがれているのです。このほか、口の中の細菌を攻撃する白血球の成分や食べかすなどもあるため、たんぱく質が豊富です。
口臭は、これらたんぱく質を口の中にすむ細菌が分解することで生まれます。分解の過程で「揮発性硫黄化合物(VSC)」と総称される、不快なにおいを放つ硫黄ガスが発生するのです。VSCのうち硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイドの3種類が口臭の原因になります。
日本人の成人の約9割がかかっているといわれる歯周病は、口臭を起こす口の中の病気の代表です。
歯周病の程度によって4グループに分けた患者さんの口の中の空気を調べ、口臭の原因である揮発性硫黄化合物(VSC)の濃度を調べた実験があります。
結果は、出血指数が高くなるほどVSCの濃度が高くなっていきました。つまり、歯周病がある人はない人よりも口臭が強く、歯周病が重症になる人ほど口臭が強くなるというわけです。
歯周病があると口臭が強くなるということはヒポクラテスの時代から知られていましたが、そのメカニズムが明らかになったのは、つい最近です。
歯周病になると歯肉の組織は壊され、出血や膿が出てきます。舌苔や歯垢の中にすむ細菌は、これらのタンパク質を分解して口臭物質であるVSCを生産しますが、とくに歯周病原菌はVSCの1つであるメチルメルカプタンを大量に発生させることがわかったのです。これには、歯周病になった歯肉からにじみ出る液体に、メチルメルカプタンのもとになる成分が多いことも関係していると考えられます。
それだけでなく、最近の研究でVSCは細胞を自死に追い込むことがわかってきました。つまり、口臭があると歯肉の組織が壊され、歯周病のきっかけになったり、歯周病を進行させる要因になったりもします。
一方、むし歯と口臭との関係はさほど強くはありません。う蝕の程度の軽いむし歯が1,2本あるぐらいなら、口臭の原因にならないといえます。
ただし、進行したむし歯は別です。神経に炎症及び、組織が腐敗した状態のむし歯が何本もあるなら、口臭の原因になります。
ちなみに、舌の汚れも口臭の原因になります。
実は、はがれ落ちた粘膜上皮細胞はおもに舌の表面のざらざらしたすき間にたまります。ここに血球成分や食べかす、死んだ細菌なども集まり、白い苔状の堆積物になります。いわば舌の汚れで、これを「舌苔」といいます。
歯垢も口臭の原因になりますが、最大のVSC工場は舌苔で、約6割がここで産生されています。ただし、うっすらと白く見える程度なら、気にする必要はないでしょう。
口臭予防の面からも、むし歯や異変があった場合は早めに治療を受けることをおすすめします。